
マンガを描くのにストーリー作りと並んで重要なのがキャラクター設定。
まずは、「なんとなくこーいうヤツ!」っていうのを決めて、以下の要素を決めていくんですね。
1. 名前:キャラクターの印象を左右する重要な要素
2. 年齢:行動や思考に影響を与える
3. 性別:社会的な立場や関係性に影響
4. 外見的特徴:読者の視覚的イメージを形成
5. 性格:行動や決断の基盤となる
これらの要素を決める際は、作品の世界観や時代設定との整合性を考慮することが大切です。例えば、中世ヨーロッパを舞台にした作品で現代的な名前を使うと違和感が生じてしまいます。
いやでも、中世ヨーロッパにヤマダタロウがいたら、ん?という感じがして面白いかも知れない…。
最低限「それはおかしいだろ」という、話に入っていけないレベルで気になる違和感は排除していきましょうか。
でも、ファンタジー世界に侍が居るとかっていうのは、なんか面白いからアリですね。個人的には。
「この矛盾はダメ」「この矛盾は漫画的に面白いからオッケー」っていう線引が必要かも知れません。
で、とりあえずキャラを決める。
99%の確率で、適当に作ったキャラとというのは「どっかで見たような」つまらないキャラになりがちです。
あんまり考えすぎて、複雑すぎるキャラにすると共感できないですしね…。
そこで、どうやってざっくり作ったキャラにどうやって個性を出していくか。
基本要素に加えて、キャラクターに個性を持たせる要素がコレ。
これらの設定を考える際は、「なぜ」という理由付けを常に意識することが大切です。例えば、「なぜこの趣味を持っているのか」「どんな経験がこの価値観を形成したのか」といった背景を考えることで、より深みのあるキャラクターを作り出せます。
これは、藤田和日郎先生が解説本の中で言っていますね。
読者はヨムナ(笑) 藤田和日郎
そして、そういう設定は、自分で「オレはこういうときに、礼儀を重んじて挨拶をする人間だから」とか会話で説明するのは興ざめなのだとか。
たしかにそうですね。
設定を漫画にどう活かすか?というと、キャラの行動に反映させるようにするとよいみたいです。
引用:
いや、この本すごい論理的にキャラ作りのこと書いてますよ。マンガだからわかりやすいし。
そんでもって、主要キャラは「自分の分身」にすると作りやすいというんですね。
「いやでも、オレ、すごく地味な性格だし…」と思うかも知れませんが、そうではなく…。
「なりたかった自分」をキャラにするんですね。そうしたら、ある意味そいつは自分の分身なので、どう動くかは簡単に想像できるし、ストーリーが進んでっても、大きくブレないというわけ。
さらに、そのキャラと対立する敵キャラとかライバルキャラは「なりたくなかったけど、今こうなっている自分」をイメージすると良いとか。
「なりたかった自分」好きなことを自由にやっていて、時々大きな失敗もするが気にせずに好きに生きていく。
「なりたくなかった自分」世間からの評価も悪くなく、安定した生活を送っているけど、未来に希望が持てない。
みたいに作っていくんですね。
お互いに「アイツ、オレができなかったことをやりやがって…」と対立する理由にもなるというもの。
これなら、けっこうできそう。それでいて、人によって、違うキャラを生み出しそうだし。
「キャラクターなんちゅうもんは、いろんなもんを持たせて個性を出せばよろしいのです」
Dr.スランプの時代に描かれた鳥山明先生の漫画解説本より。
鳥山明のヘタッピマンガ研究所 あなたも 漫画家になれる!かもしれないの巻
キャラクターのヘアスタイル、服、帽子、メガネなどを追加していって個性を出す、という方法。
ちょっとこれはギャグよりの考え方なのかな?とも思いますが、お手軽な方法なのは間違いなし。
というのがありました。
このあたりは、下手っぴ漫画研究所の最初のページに書かれているので、「サンプルを見る」から読めます。
というか、結構終わりの方まで読めてしまうので、なんか得した気分。
鳥山明先生の13パートのうち7パートまでタダで読めます。
なお、ヘタッピマンガ研究所の後半は、鳥山明先生以外の人が描いた漫画解説になっています。
登場するキャラが多い場合、ひと目でソイツとわかる何かがないと、あれコイツだれだ…?ってなっちゃうので、小物で区別させるのは有効だと思います。
成長と変化、この「人が変わっていく」という部分は、非常に引き込まれるところですね。
魅力的なキャラクターは、物語の中で成長し変化します。この成長過程を設定することで、読者の共感も得やすくなります。
ギャグ漫画だと、成長はいらないという考えもあります。
鳥山明先生は解説本の中で「キャラクターにはそれぞれ弱点を設定している」とありました。
鳥山明のヘタッピマンガ研究所 あなたも 漫画家になれる!かもしれないの巻
そして、「弱点があったほうが、勝ったときによけいに嬉しい」のだそう。ウルトラマンのカラータイマーみたいなもんだそうです。
藤田和日郎先生は解説本の中で「ひとのこころが変わる感動のストーリー」について解説しています。(藤田和日郎「なんで?と徹底的に聞け」)
読者はヨムナ(笑) 藤田和日郎
それは、欠けた部分がある主人公が、事件に巻き込まれて、どうにか解決できたときに欠けた部分を取り戻してストーリー完結、という流れ。
荒木飛呂彦先生は解説本で「主人公は常にプラス」と解説しています。(第四章ストーリーの作り方)
どういうことかというと、ストーリーの途中で主人公がすべてをなくして取り戻すみたいなのはよくなくて、スタート地点からどんどん高みに登ってってプラスプラスになっていくのが良いのだと。
映画キック・アスの続編「キック・アス・ジャスティス・フォーエバー」のヒットガールを例に出して解説してました。まあたしかにあれは、そんなヒットガール見たくないという感じではありましたね。
これは映画の続編ということ、頂点にいってしまったら落とすしかないので、しょうがない部分もあります。
だけど、漫画はそれじゃダメだと。「いったんマイナスになる」のもダメだし、「壁が合って成長が止まる」のもダメだということでした。
そうすると、最初は致命的な欠点がある主人公するしかないじゃん?
というわけで、3先生とも同じことを言っているのが興味深いですね。
そして、何かしら悩みや弱みを持っているキャラが、徐々に成長して問題点を克服していくって、漫画の王道。面白いポイントですね。
なので、読者が感情移入しやすい主人公には、わかりやすい弱みを設定しておくのが良いかも知れません。
この成長設定は、物語のプロットと密接に関連させることが重要です。キャラクターの成長が物語の展開を後押しし、同時に物語の展開がキャラクターを成長させるという相互作用を生み出すことで、より魅力的な作品になります。
キャラクター設定を効率的に管理するために、キャラクター設定シートを作っておくといいでしょう。話が進んでいくうちに、キャラが設定と矛盾する行動をとることを防ぐためです。
「ジョジョの奇妙な冒険」の荒木先生は、キャラは欲望をベースにした動機を持って行動しているという部分に肉付けをしていき、設定シートを作るのだそうです。
キャラクター設定シートの主な項目:
「このキャラはxxの真実を知らない」
「このキャラはキャラAとキャラBの関係を恋人同士だと誤解している」
とか、そういう情報もあるといいかもですね。
設定シートを作成する際のポイント
1. 必要最小限の情報から始める
2. 物語の進行に合わせて徐々に詳細化する
3. 矛盾がないか定期的にチェックする
4. 他のキャラクターとの関係性も記録する
いやもう、履歴書みたい。
でも、キャラが多くなってくるとこういう設定管理は必要かも。
最初は登場人物2人か3人くらいの読み切りにしておいたほうが無難かな…。
キャラクター設定に深みを持たせるために、心理学の知見を活用するってことも有効。
特に、性格心理学の理論を参考にすることで、より一貫性のある行動パターンを設定できます。
自分の分身理論で新キャラを作りきれなくなってきたら、この理論を使うといいかもです。
1. ビッグファイブ理論:
これらの要素をバランスよく組み合わせることで、多面的な性格を持つキャラクターを作り出せます。
2. エニアグラム:
3. MBTI(マイヤーズ・ブリッグス・タイプ指標):
これらの心理学理論を参考にすることで、より深みのあるキャラクター設定が可能になります。
関連)ビッグファイブ理論に
でも結局、漫画の中でそのキャラがどう動いてどういう印象をもたせるかが決まるようにしておかないと、せっかくのキャラ設定が生きてきません。
このキャラはこういう場面では、こんなことを言う…こう聞かれたら拒否する…というアクション・リアクションをゼロから構築するのは大変です。なので、知り合いや映画、ドラマの中のキャラをモデルにするんですね。
ただ、誰かの漫画のキャラをモデルにするとパクリになるというか…「どっかで見たようなキャラ」になるので、避けたほうがいいでしょう。
荒木飛呂彦先生の漫画術では、「ジョジョの奇妙な冒険」の空条承太郎はクリント・イーストウッドをモデルにしたと言っていました。どことなく品があり、ただポケットに手を突っ込んで立っているだけなのに、存在感や威圧感があるとか、どんなときでも、絶対走ったりしないとか。
全然違う業界から持ってくるのは、パクリではなくオマージュ…となにかのインタビューでおっしゃっていたような気もします。
藤田和日郎先生の漫画術にあった「こんな人間はいない」と言われたら考えること、という項目。
「こんな漫画みたいな性格の人間はいない」という意味だったらOK。面白ければそこは無視して良いというんです。
だけど、「人間のリアクションとしておかしい」という部分は直すべき。
主人公が普通の町からパラレルワールドに行ったという話で、巨大ロボットが出てきたときのセリフが「いったい誰が操縦しているんだ!?」だったら、おかしい。
ロボットが居ることには驚かないんかい!というわけです。
「なんだあれは!ロボット…!?」くらいだったら、読者も違和感なく読めるっていうんです。
これはストーリーありきでキャラを動かしていると、ときどき起こることなので気をつけていきたいところですね。